第10回目となるヴァンデ・グローブが、2024年11月10日にフランスのサーブル=ドロンヌ港からスタートしました。
今年は過去最多の40人のスキッパーが参戦し、地球を無寄港・無補給で一周するという過酷な挑戦に挑んでいます。コースは大西洋、インド洋、太平洋を経て南極を回り、再び大西洋を北上する約45,000kmに及びます。
現在、南半球に入りつつあるスキッパーたちは、無風地帯を突破し、南大西洋の貿易風を利用して加速を試みています。フランスのトーマス・リュヤンがリーダーグループを牽引しつつも、他のスキッパーとの激しい競争が続いています。
ヴァンデ・グローブ:フランスが誇る海の冒険
ヴァンデ・グローブは、世界一過酷と言われるヨットレースで、「海のエベレスト」とも称されるほどです。この無寄港・無補給・単独で行われる地球一周レースは、フランスで特別な存在感を持ち、文化や教育、さらにはポップカルチャーにまで影響を及ぼしています。
ヴァンデ・グローブと学校教育
ヴァンデ・グローブはフランスで特別な存在感を持ち、教育現場でも頻繁に取り上げられます。例えば、「Vendée Globe Junior」というプログラムを通じて、児童たちはレースの航路、気象条件、海洋環境について学ぶことができます。レースに合わせた教育ツールは、幼稚園から中学校まで幅広い年齢層に提供されており、持続可能性や自然科学の学習にも役立っています。
たとえばフランスの小学校では、ヴァンデ・グローブを通じて地理や自然科学を学ぶ機会が提供されています。
実際に小学6年生に配布されているプリント教材がこちら。
メディアや社会での人気
ヴァンデ・グローブはフランス全土で注目されるイベントです。レースの進行状況はテレビやインターネットで詳細に報じられ、多くのフランス人が熱心に応援します。特にスキッパーたちの挑戦や感動的なストーリーは、観客の心を掴みます。彼らが一人で広大な海に立ち向かう姿は、フランス国民にとって誇りともいえる存在です。
漫画で描かれるヴァンデ・グローブ
この冒険は漫画にもなり、フランスの読者に親しまれています。「Histoires du Vendée Globe」という漫画シリーズは、レースに参加したスキッパーたちの実話を基に、彼らの挑戦と海の過酷さを描いています。この作品は単なる娯楽にとどまらず、この海の冒険の魅力や挑戦の厳しさ、人間の精神力や自然の偉大さを伝える文化的な資産としても評価されています。
イギリス出身のヨットレーサー、サマンサ・デイビスさんは、「ヴァンデ・グローブ」に深い関わりを持つスキッパーの一人です。彼女は競技に参加するだけでなく、自身の経験を通じて教育やチャリティに力を入れています。その一環として出版された「Le Vendée Globe de Samantha Davies」という書籍は、過酷な航海や困難を乗り越える彼女の姿とともに、地理や気象などの教育的要素を取り入れています。
環境保護への意識向上
今年のレースでは、環境保護が大きなテーマとなっています。スキッパーたちは航海中に海洋データを収集し、地球温暖化の影響を記録しています。これにより、レースがただの競技イベントではなく、海洋環境保護の啓発活動の一環としても機能しています。
世界の舞台で輝く日本人スキッパー
最後にご紹介したい日本のスキッパー、白石康次郎さん。
2024年のヴァンデ・グローブでは、日本のスキッパー、白石康次郎さんが注目されています。彼は「DMG MORI Global One」を駆り、3度目のヴァンデ・グローブ挑戦に臨んでいます。前回大会では、アジア人初の完走者として大きな快挙を成し遂げ、日本だけでなく国際的にもその名を轟かせました。
白石さんは、レースでの技術力や決意だけでなく、環境保護への意識も高く評価されています。彼の船「DMG MORI Global One」は、持続可能性を重視した最新技術で設計され、再生可能エネルギーの利用を促進する役割も担っています。今回のレースでも、彼の目標は再び完走を果たし、トップグループに迫ることで新たな歴史を作ることです。
ヴァンデ・グローブは、過酷な条件の中でスキッパーたちが挑戦するだけでなく、文化や国際交流の架け橋としても機能しています。彼らの挑戦を応援しながら、この壮大な冒険を見届けてみてはいかがでしょうか?
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